音響装置的 重量信仰

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オーディオの通説の一つに「悩んだら重い方」というのがあります。
もちろん「そんなことない」と言う人もいますし、頑なに「重くなきゃダメ」という人もいます。
前回、ジャンクのスピーカーを買った時「見た目と重さで選んだ」と書きました。

なんで「重い方」なのか?

実はこれ、似たような値段/機能(スペック)の装置を「音を聴かずに選ぶ」とき、「重い方を選ぶとハズレを引きにくい」という大雑把な確率の話でしかないんです。

失敗することもあります。絶対ではありません。
「重さは関係ない」も「重くなければダメ」もどちらも間違いじゃないけど正しくもない。

では、重い方が良い結果になる確率が高くなるという根拠はなにか?

これは装置によって観点が異なるのですが、たとえばスピーカーで考えましょうか。

スピーカーの役割は磁気回路で作った磁界にコイルを置き、コイルに電流を通した際に発生した力で振動板を動かし、振動板で空気を動かして音波にすることです。
モノを動かすには力があるだけではダメで「支点」「力点」「作用点」がきちんと噛み合っている必要があります。
スピーカーに置き換えると、
支点:磁界(マグネットとヨークで構成される磁気回路)
力点:ボイスコイル
作用点:振動板
ですね。

動かしたいのは振動板ですが、振動板にも重さはありますし、真空中ではないので、空気の反発も受け、逆に磁石を動かそうとする力がかかります。
動きにくい振動板は支点となって磁界を作用点にしようとすると考えてもいいかもしれません。
(ここでいきなり逆の話が出てきますが、スピーカーは部品レベルで考えると、ボイスコイルと振動板で構成する振動系は丈夫で「軽い」必要があります。ただし、振動系はもともとgオーダーの話なので全体の重さにはほとんど影響しません。)

支点の磁界(≒磁石の位置)は動いてもらっては困るし、力点と作用点のボイスコイルと振動板は正確に動かないと困ります。
ほとんどのスピーカーは、磁石とヨークが金属のフレームに固定されていて、フレームをキャビネット(箱)のバッフル面にねじ留めされています。
極端な話、ペラペラのバッフル、フニャフニャのフレームでは振動板だけを正確に動かす事が出来ず、ユニット自体が動いてしまい、まともな音にならない。という事態が起きえます。
つまり、正確な動作のためには、磁気回路を正確に固定する必要があり、そのためには、頑丈なキャビネットと、頑丈なフレームが必要であり、頑丈に作ろうとすると通常は重くなる。
また、磁気回路は重い方が(慣性質量が増えるため)動きにくくなります。

ということで、似たような構造、価格のスピーカー(システムまたはユニット)は、重い方がいい結果を得る確率が高くなる。ということになります。

ちゃんと作っていくと、結果的に重くなる事が多いだけで、重いから良いのではありません。

逆に言うと(別のアプローチで)磁気回路を正確に固定して振動系を正確に動かせるなら、システムの重さは関係なくなります。(そういう設計のスピーカーもあります。)

といったことを踏まえて、今回のスピーカーは、予算内で見た目と重さで選んで来ています。

「なぜ」を踏まえて「重さ」を求めてるので、ある意味「原理主義」ですかね。。。

「狂信的」にはなりたくありません。(笑)