出先でiQOSチャージャーを充電しよう

USB経由のバッテリー充電は結構面倒

iQOSを一昨年の11月から使っていますが、さすがに1年以上使っているとバッテリーのヘタリが気になってきました。
特にホルダーの方はだいぶくたびれてきて最後の方で赤点灯になることが多くなってきていたのですが、買い足そうにもいまだに品不足で、キットを売っているところに出くわしません。
仕方なしにホルダーだけ買い足したのですが、チャージャーのほうも夜の充電を忘れると出先でバッテリーが切れて残念な思いをすることが多くなってきています。

いざという時、出先でも充電したい。
けど、純正のアダプターは持ち歩きたくない。。

iQOSのチャージャーはUSB電源アダプターからUSBケーブルで充電するようになっているのですが、なぜか私が普段持ち歩いているUSB電源アダプターからだと充電そのものができません。
ネットで検索すると純正ではないアダプターとケーブルで充電に困っている人はそこそこいるものの、原因はケーブルだとかアダプターだとか情報が入り乱れて定まらず、結局「製品選びに気を付けよう」「純正バンザイ」的なフワッとした記事ばかりです。

という事で、今回はiQOSチャージャーの充電について、技術的に確認、解決していきたいと思います。

まずiQOS純正のアダプター、ケーブルと、手持ちの(普段持ち歩いている)アダプター、ケーブルのピンアサインを調べてみると、USBケーブルは、純正品も手持ちの物も、オスA~オスMicroのデータ用のごく一般的なものでした。
純正ケーブルと手持ちアダプターの組み合わせでは充電できず、手持ちケーブルと純正アダプターでは充電可能なので、至極当然ですね。

違いがあるのはアダプター側で、純正はデータラインがショート(DCP)、手持ちのはデータ「+」が2V、データ「-」が2.7V(Apple Divider Mode)でした。

USB充電の判別方式は(ざっくり)4つ

ここでUSBで充電する際の供給側(電源側)仕掛けについて、USB Battery Charging(USB BC)1.2の規定と、独自の変わり種だけど幅を利かせている規格の仕様を書き出してみます。
(USB Type-C、USB 3.1、USB PDで更に増えていますが、持っていないので今回は省略します。)

Standard Downstream Port(SDP)
最大500mAの電源供給とUSB2.0のデータ通信を同時利用可
データライン(+と-)が、それぞれ15kΩ程度の抵抗でGNDに接続され、プルダウンしています。

Charging Downstream Port(CDP)
最大1.5Aの電源供給とUSB2.0のデータ通信を同時利用可
PCなどのデバイス向けで、USB機器認識の前に電源のハンドシェイクがある。
データラインにハンドシェイク用のちょっとした回路がぶら下がっています。

Dedicated charging port(DCP)
最大1.5A(またはそれ以上)の電源供給のみ。
データ通信を全く行わなわず、500mAを超える電流を供給したいときに使われます。
電源供給側のデータラインの+-間がショートしています。(規格上は200Ω以下になっていること)
主にACアダプター、シガーライターアダプターなどで充電用の電源を供給する場合に使われます。
Android端末にこの方式が多いらしいです。

Divider Mode
Apple製品(iPod、iPhone)用
データ+に2V、データ-に2.7Vの電圧が掛かっています。(1Aモード)
5Vラインからの抵抗分圧で必要電圧を作って供給します。

これらをふまえると、どうやらiQOSチャージャーは「DCPでないと充電しない」作りになっているようです。
AndroidスマホのUSB電源アダプターがDCPなことが多いようで、これを持っている方はiQOSの充電に困ることはありません。
しかし、私が普段持ち歩いているUSB電源アダプター、モバイルバッテリーはどれもDivider Modeです。
(もともとiPhoneで使うためにそろえたので。。)

ではどうするか。

iQOSチャージャーに「DCPと認識」させればいいので、安物USBケーブルを切って、Micro側から見たデータの「+」と「-」をショートさせた「DCP偽装ケーブル」をこしらえて早速実験。
見事、普段持ち歩いているDivider ModeのUSB電源アダプターでiQOSチャージャーの充電が可能になりました。

なお、この方法、電源アダプター側の能力にかかわらずUSBデバイス側はDCPと誤認して元気よく電力を消費しますので、電源から見た負荷が重くなりすぎる場合があり、余裕がない電源アダプターと組み合わせると危険です。

ところで、iQOSに限らず「使うUSBケーブルによって充電できたりできなかったりすることがある」という経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
これって。。と「ピン」と来た方もいらっしゃるでしょうか。。

ケーブルによって充電できたりできなかったりするという事は、市販のUSBケーブルの中には私が細工したように、プロファイルを偽装しているものがあるという事です。
場合によってはUSBデバイス側でも電源のプロファイルを無視して動作するものまであります。
例えば、Apple純正のLightning-USBケーブル、Lightning-MicroUSB変換アダプターは、Divider ModeまたはDCPでないと充電できませんが、私が持っているサードパーティーのLightning-USBケーブルのなかには、SDPでも充電可能なものがあります。(しかもMFi認証品です。)

そもそもUSBはデバイスのバッテリーを充電するという使われ方は考えられておらず、充電用の規格の方が後追いで策定されましたが、ソケットの形は同じなのに性能や機能が大きく違うという分かりにくさや、実は規格に沿った実装がほとんどされていないという残念な実態がありますので、一概にケーブルだけを悪者にするものではありませんが、こと安全性を考えると、充電できるケーブルを探すのではなく、普通の(純正)ケーブルで充電できる電源アダプターや、モバイルバッテリーを探すべきものではあります。

残念なのは、電源アダプターもモバイルバッテリーも、どのプロファイルなのか表示していることはほとんどなく、はたまたデバイス側は専用品(純正品)以外は動作も安全性も保証しないとしか表示していなかったりします。

巷の製品の実装状況を考えれば、メーカーとして責任ある発言をしようとすると、そうとしか言えない状況ではありますが、そこにかこつけてケーブルに少々細工して充電できるようにして「急速充電対応」「●アンペア対応」とか謳うことで生まれる「ビジネスチャンス」に乗っかる乱暴な方も出てくるわけで、性能、機能の要件を明記しないことでかえって混乱に拍車をかけているようにも見えます。

また、ソケット形状を一新し、満を持して登場したかに見えたUSB Type-Cですが、併せてUSB3.1、USB Power Delivery(USB PD)などで電源用の規格も追加されており、組合せのバリエーションは逆に増えています。
GoogleのエンジニアがAmazonで売られているケーブルを片っ端から調べたら規格に合わないものだらけ。中には装置を壊してしまうものまで売られているなど、出だし早々、随分酷い状況のようです。

余談ですが、今回安売りUSBケーブルをいくつか切って調べたのですが、アキバで買ってきたものは、いずれも5V:赤、GND:黒、シールド:ありだったのですが、100均のケーブルは、5V:白、GND:赤、シールド:なしなんていうのがあったりして面白いやら呆れるやら。。

という事で、今回作ったケーブルは私のiQOS充電専用です。

それと、コンビニでは2,000円くらいする「スマホ用モバイルバッテリー」がアキバの某店で430円で投げ売りしていたので買ってきたら、出力1AというのにSDPでした。(これではiPhoneでは動かない)
こちらも格安Lightning-USBケーブル(MFiなし)を使い、DCP偽装でiPhoneでも使えるようにしました。(笑)

なお、よい子はマネしてはいけません。(笑)