そもそもステレオってなんだろ?

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ステレオについて基本的なことを書き忘れていました。

★音の方向感覚

大抵の人間は耳がふたつある事で音源の方向、 位置を識別する能力があるらしい。
(らしいって。。。)
ではふたつの耳をどう使って音のやって来る方向を認識しているのか?
1.左右の音の音量差で方向を認識する。
人間の耳は頭のちょうど左右の端っこに、ほぼ正反対に向いて付いており、反対側の音は頭を回り込まなければならないために音量差が出来ます。
この左右の音量差で方向を認識する。
というのがひとつ。

2.左右の音の音質差で方向を認識する。
耳は単に穴が開いているだけではなく、変な形をした、衝立のようなものが付いています。
この衝立の形と、頭、顔の形のおかげで、音源の方向によって鼓膜に届く音の音色が微妙に変わり、左右の音の音色差によって方向を認識できる。
と言うのがふたつ目。
左右だけでなく上下や前後も認識できるのはこのためと考えられているようです。

3.左右の耳に届く音の時間差で方向を認識する。
右からの音は左の耳には遅れて届き、左からの音は右の耳に遅れて届き、正面からの音は左右同時に届く。この時間差により方向を認識する。
と言うのが三つ目

4.以上3つの違いを脳みそが高度な解析を行い方向や距離を決定している。(らしいです。)
さらに、音源から出た音が、壁や床、天井に反射して出来た時間差まで処理して部屋の大きさや、ある程度の物の形まで認識することも可能なんだそうです。

ちなみに、低音域では音量より時間差、高音域では時間より音量差のほうが、方向性識別にとって支配的なのだそうですが、個人的には5kHzを超える高音域でも時間差によってかなり方向性感じるんですけどね。。

★分解できる音と、分解できない音

これだけ高度な処理をして、音がやって来る方向や距離を認識してるんだから、ステレオセットのスピーカーが左右の2台ではそれぞれのスピーカーから音が出てるように感じていいはずなのに、スピーカーのある位置以外の場所から音が聞こえてしまうのはなぜだろうか?

まず、自然界においては楽器にしても、声にしても「全く同じ音」は、まず存在しません。
声の見分けもつかないそっくり双子の兄弟が左右で同じ歌を歌ったら一人の声として真ん中から聞こえる!なんて起きませんよね。
ちゃんと左右で二人が歌ってるように聞こえると思います。
ところが、ステレオセットで左右両チャンネルに同じ信号を入れれて、左右のスピーカーのちょうど真ん中で聴いていると、左右のスピーカーの間の空間から音がしてるように聞こえます。
右のスピーカーから出た音と、左のスピーカーから出た音波が混ざり合って出来た合成波が、正面からの音と同じような状況になって耳に届いている。
つまり、人が聞き分け出来ないほど同じ音が左右のスピーカーから出ているということです。

この状態で、ステレオで音の方向をコントロールするには、右のボリュームをちょいと上げてやると、合成波のバランスが左右の音量差となって、何となく右に寄った音になって聞こえます。
これが簡単なからくりです。
あとは、それぞれの音に時間差や残響成分などを付加して「何となくそこに演奏者がいるように見せかけている」だけだったりします。
このほか、臨場感を重視するオーケストラの録音などは、マイクの位置関係だけで時間差、音質差をそのまま収録したり、ヘッドホンステレオ用にはダミーヘッドなんて言うものを使って録音したバイノーラルなんていうのもあります。

自然界の音は似たようなものでもわずかな違いがあり、音が混じっても大抵分解できるが、ステレオでは人間が分解しきれずに、あたかも何もない空間から音がしてるように錯覚する音が、記録、再生されている。ということになります。

★音の分別能力

もう一つ、重要なポイントとして、人間には「自分の関心がある音だけ抜きだす」と言う、とても変わった特殊な能力があります。

こちらでしゃべっているときに遠くで自分の悪口を言っているのを聞き耳立ててみたり、町の雑踏の中で普通の声で会話できる(相手の声だけ抜きだして聴いている)時などはこの能力がフル回転。
先の音の方向性認識に加えて、特定の音だけ認識感度を上げる(聞きたい音だけ残して他は捨てるフィルタリング)と言う芸当が出来るらしい。
逆に方向性認識がうまくいかないとこのフィルタリングもうまく出来ない事が多いようです。
実はほとんどのステレオの音源ではこのフィルタリング能力が生かせない状態で録音されています。(マルチトラックレコーディングのほとんどが音量差だけで定位させている。)

★音の聞き分け能力

人間は音の高さの変化には敏感だが、大きさの変化には鈍感と言われています。

★個人差

音のする方向や空間認識、音の聞き分けは、人が先天的に持っている機能ではなく、成長過程や訓練によって獲得する能力です。
従って、個人差が恐ろしく大きいです。
また、極端な例では、「自分の関心がある音だけ抜きだす」能力を、音の方向や空間認識ではない事に特化させている人もいらっしゃいます。
つまり、同じ環境で同じ音を聞いていても、人によって聞き方、聞こえ方が違うと言う事です。
(これは重要な違いで、掘り下げる必要がありますが、長くなるので改めて書きたいと思います。)

★★ 結論 ★★

ステレオは、
複数のスピーカーからの音波を空間合成して耳に届け、音源の虚像を作り出すシステムです。
言い方を変えると、
音楽の再生時にスピーカー以外の場所に演奏者がいるかのように錯覚させるシステムです。

VR(仮想現実)のはしりですな。。