MCトランス内蔵&バッテリー駆動&差動入力&バランス増幅&バランス出力フォノイコライザーでアナログレコード復活。(ってタイトル長過ぎ。文章も長過ぎ。)

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アナログレコードこそバランスドライブ

去年、ジャンクで入手したサンスイアンプを一気に整備した際、フォノ(アナログレコード入力)の動作確認のために実家からレコードプレーヤーを持ってきていました。

そのとき整備した中でも、AU-D607G ExtraとAU-D707G Extraのフォノ入力にあるMCポジションは、ヘッドアンプではなくトランスで昇圧しており、そのサウンドにも興味がありました。
30年以上前に友人宅の超高級システムでヘッドアンプとトランスの違いは知ってましたが、自分でステレオ揃えようという頃にはMCトランス内蔵アンプなど既になく、更にオーディオの仕事をしだした頃にはアナログがおまけになってきてたり、勤めてた会社にMCタイプのカートリッジがなかったりで、普及価格帯でのMC昇圧対決は、実は今回が初めてです。
パワー段の違いを排除するために、REC OUTから出力して試作アンプに接続。
比較対象は、MCヘッドアンプタイプがAU-D607F ExtraとAU-D607X。トランスタイプがAU-D607G ExtraとAU-D707G Extra。
これが笑っちゃうくらいの大違いのサウンドで、NECのA7(MCヘッドアンプタイプ)を買ったのは大失敗だったことがあっけなく判明。
まあ、当時、すでに買える価格帯にMCトランス内蔵機なんてなかったですし、アンプを中古で買うなんて発想もありませんでしたけど。。

さらに、25年前に「もうアナログには戻らない」と誓ったはずなのに、アンプのチェックをしているうちに悪い虫が飛び出してきました。

フォノカートリッジは、形式によってコイルが動くか、磁石(磁界)が動くかの違いはあれど、本質的にコイルと磁石で発電した信号がそのままプラスとマイナスで出てくる、差動(バランス)出力タイプの装置です。
これを、バッテリー電源でバランスドライブしたら。。

ここで、
アナログレコードがオーディオの第一線を退いてずいぶん経ちますので、何言ってるのかよくわからない方もいると思うので、ちょっと解説します。

2014年現在、音源(ソース)と言えば、いわゆる「ラインレベル」と言われる、0dBが0.7V〜2V程度のフラットな周波数特性を持った信号電圧が出てくる機器が殆どですが、アナログレコードのピックアップ(フォノカートリッジ、レコード針)からは、0.05mV〜数mV程度と極端に小さく、おまけに極端にハイ上がりなイコライジングがされた信号が出力されます。

フォノカートリッジは、MM系とMC系(とその他)に大別されます。(今回、その他は除外します。)

MM(ムービングマグネット)型は、その名の通り、スタイラス・カンチレバー(針)に直結した磁石が動いて、固定されたコイルが磁力変化を拾って発電します。

シュアーが持っていたMMの特許回避のための派生品種が多いのも特徴です。
MM系には、磁石もコイルも動かないMI(ムービングアイアン)型というのもあります。
MIはADCが特許を持っていたので、こちらもバリエーションが多いです。
MI型は磁気回路を形成する鉄心(アイアン)を針につけて動かして磁力変化を起こします。
B&OのMMC(ムービングマイクロクロス)はMI型のバリエーションの一つと考えていいと思います。

MM系はコイルが固定なので巻き数を多くできるため、出力電圧が数mVと比較的高くなりますが、出力インピーダンスも数kΩと高くなります。このため、負荷インピーダンス(=フォノイコライザーの入力インピーダンス)を47kΩ程度に指定しているものが殆どです。
更に、カートリッジの負荷側(=フォノイコライザーの入力側)の静電容量によっても高域特性に変化が出るため、負荷容量を指定している品種もありますが、200〜400pFあたりが指定されることが多いです。

実は、この静電容量が結構厄介で、接続するケーブルもそれ自身が線間に静電容量を持っているので、ケーブルの線間容量とフォノイコライザーの入力容量を合わせて考える必要があります。
つまり、MM系では、同じカートリッジ、フォノイコライザーの組み合わせでも、ケーブル(の線間容量)によって音(周波数特性)がコロコロ変わるということです。
最近でも良心的なケーブルには抵抗値やインピーダンスのほか線間容量が表示されていたりしますが、送受側の(回路の)インピーダンスによっては重要なファクターとなります。

少々話が脱線しますが、「ケーブル」で「音が変わる」とか、「変わらない」とか主張される方の中でも、特に重度の電線病患者な方や、頑なにそれを否定される方に、素材や銘柄や形式や値段に惑わされずに、こういう計算可能なレベルの電気的な特性にもきちんと着目してる人って極端に少なく感じるのは気のせいでしょうか?(苦笑)
趣味の世界ですから、それぞれの方の感じ方を否定するものではありませんし、表現を止めろなどと言えた義理でもありませんが、せめて、それらの話を受け取る側として、「変わるも変わらないも」その時「比較に使用した機器とケーブルの組み合わせの中での事」ということを心掛けておきたいと思います。

話を戻して。。

MC(ムービングコイル)型は、こちらもその名の通り、スタイラス・カンチレバーと直結したコイルが、固定された磁石(磁気回路)の中で動くことで発電します。
まあ、ダイナミックマイクと同じ様なものと思っていただいて構いません。

針が拾った溝の振動でコイルを動かす必要があるのでコイルを軽く作らなければならず、巻き数が多く取れないため、出力電圧が0.2mV以下のものが殆どです。
出力インピーダンスも低く、主に3種類、3Ω前後(オルトフォンなど)、15Ω前後(オーディオテクニカなど)、40Ω前後(デノンなど)あたりが主流です。
MM系より一桁電圧が低いため、トランスやヘッドアンプで増幅する必要があります。
カートリッジから見た負荷側(ヘッドアンプの入力側、またはステップアップトランスの1次側)インピーダンスも低く、100Ω以下の指定が殆どです。
出力インピーダンスが低いことから、負荷側(ケーブル、ヘッドアンプ・トランスの入力側)の静電容量には寛容(鈍感)ですが、負荷側のインピーダンスも低いことから、線自身の抵抗値や接点の接触抵抗には少々敏感です。
ただし、この抵抗値による変化は、オーディオ帯域では基本的に周波数特性を持たないため音量差として出てきますので、普通につないでいれば問題はありません。
MM系がケーブルの線間容量で音が変わちゃうのとは本質的に違います。

そして、フォノカートリッジから出力される、この極端に小さな電気信号をラインレベルの機器と同程度まで増幅しつつ、元のフラットな周波数特性に戻すのが、フォノイコライザーの役割です。
このイコライザーに使う周波数特性をRIAA特性と言います。
(イコライザーカーブはRIAAだけじゃなかったよね?という突込みは、この際なしでお願いします。今回、モノラルやSPは対象外です。)
正確なRIAA特性を得るためには、特性の良い、かつ値の正しい素子を使用する必要があります。

解説ここまで。

ということで、まずは我が家の環境を確認。

プレーヤーにカートリッジを付けた状態で、RCA端子の左右グラウンド間の導通をチェックすると、導通なし。
RCAのグラウンドとアース線の導通もなし。
プレーヤーの裏側外して配線をチェックしたら、出力信号線は5極のコネクターでつながっていて、交換/復旧可能。
OK牧場!(笑)

なんだなんだ。
このままバランスラインに交換できちゃうじゃん。

続いて回路の検討と製作。

MCはもちろんステップアップトランスを使い、MM用のフォノイコライザーにつなぐ形にします。

MCトランスは、707Gから剥がすのも手ですが、比較対象がなくなっちゃうのと、3ポジションのパーマロイコアトランスが入手可能なのが分かりましたので、これを使いましょう。
(実は、当時サンスイアンプに搭載されることになるMCトランスを最初に試作した方が、リタイアされたあと個人で作られています。製品を買えば10万くらいしそうなMCトランスが安く入手できます。)

フォノイコライザーアンプは、入力インピーダンスを47〜50kΩ程度にする必要があるのと、うちのパワーアンプのゲインが20dBと低めなことや、他のラインレベル機器とも電圧を合わせる必要もあり、一般的なフォノイコライザーより大きめのゲインが必要です。

イコライザーの構成は、CR(パッシブ)型とNF(アクティブ)型に分けられます。
また、アンプとしても、正相(非反転)増幅型、反転増幅型があります。
さらに、ディスクリートで行くか、オペアンプを使うか、ハイブリッドにするか。。

ここであまり悩みすぎたり、壮大すぎる計画を立てても途中で挫折するのが見えてますので、秋月Cタイプ基板(72x48mm)1枚に、バランスで2ch乗せることを前提に、JFET入力デュアルのオペアンプで、差動入力&差動出力となる、インスツルメンテーションアンプ形式のNF型フィルターを構成しましょう。(正確にはインスツルメンテーションアンプ前半の差動部分だけ使い、後半のシングル変換は行いません。)

とりあえず、サンスイアンプを参考にした定数で部品を揃えます。
最近の抵抗は1%誤差が普通なのでいいのですが、問題はコンデンサ。
アキバでは、よくてJ級(10%誤差)が普通なのですが、なんと俺様的ワンダーランドなお店でニッセイのG級(5%誤差)をリーズナボーな価格で発見。

早速ゲットして仮組し、動作チェックしてみました。
・やっぱりゲイン足りねぇ。。あと10dBは欲しい。
・DCオフセットが数Vもあり、加えてふらつく。

まあ、DC領域で50dB以上のゲインを与えながら、なにも制御かけてなきゃ当たり前の結果で、更にゲインを上げたら、もっと凄いことになるのは目に見えてますね。

さてどうするか。。
・こっそりオフセット電圧を掛けて補正する。
 →バッテリー電源だから、抵抗分圧じゃ使ってるうちに電圧変わっちゃうし、温度補償もできないですね。
・DCサーボを掛ける。
 →回路規模的にこの選択肢はなし。
・出力カップリングコンデンサを入れてDCカットする。
 →できれば前後は直結したいし、今のままでは電源電圧近くまでオフセットしちゃいそうな勢いでオペアンプの動作が怪しくなるし。。。
・AC動作にする。
 →今回の定数だとNFB回路のインピーダンスが低く、コンデンサ容量が大きくなりそうだけど、回路規模的にはこれが一番インパクト小さい。。かな?

とうことで、抵抗の交換とコンデンサの追加で、ACゲインを12dB上げつつ、DC帰還量が100%(DCゲイン0dB)のAC動作にしてみました。
20Hzあたりからゲインが下がるのでサブソニックフィルター代わりにもなり、一石二鳥。
しかも、DCカットにコンデンサを挿入すると、コンデンサ両端にはDCが殆ど出ないのと、通過するACも、数mV、数10mAしかありませんので、有極のケミコンが使えます。
もちろんフィルムコンデンサ(2.2μF)をパラに設置し、音にも配慮します。
ただし、最短配線したかったので基板裏にぶら下げましたが、100V耐圧のニチコンKZ(これが馬鹿デカい)を使ったので、見事に基板からハミ出してるのと、ゲインを目いっぱい上げたうえにDCカットした相乗効果で、30Hz以下のRIAA偏差が少し大きめ(-数dB)になります。
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電源入れてチェックすると、出力のDCオフセット電圧は1mV前後。
アンプにつないでフルボリュームにしてもスピーカー出力のDCオフセットはほぼ変化なしで、無事合格。

MCトランスもつないで、バラック配線して音出しチェックしましたが、ちゃんと音が出ました。w
FMチューナーと同程度の音量なので、ゲインも大丈夫なようです。
ちょっとノイジーですが、実験用のトランス電源のせいなのか、バラック配線のせいなのか、どこか失敗したのかは、ケースに収めないとわかりません。

で、ケース、スイッチ、コネクターもそろえて配置も検討。
と、実はここまでは2013年末には出来てたんですが、事務所の移転やら家の中の配置換えやらなんやらで、2月にやっとこケースに収まりました。
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そして、フォノケーブルをバランスXLRコネクタータイプに交換。
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ちなみに、ケーブル部分の静電容量は、120pF設計、LCRメーター実測で約130pFで、ほぼ設計通りでした。
フォノイコライザーの入力は100pFですので合計230pFです。

バッテリーにつないで単独で電源ON。
各部の電圧も正常。
アンプとプレーヤーをつないで、まずは入力ショートでフルボリューム時のノイズチェック。
乾いた「さ〜〜」というノイズだけです。レベルも充分に低いようです。各ポジションでも同様にチェックしましたが、ハムも拾っていないようです。
直結なのに、スイッチを切り替えてもショックノイズがほとんどありません。流石ACアンプ。

そして音出し。
・・・・・
サンスイアンプのフォノイコライザーでも楽しさは十分に伝わってきていましたが、生っぽさと迫力は段違いです。
DCカットの影響を心配しましたが、タイトで抜けのいい低音で量感もたっぷりあります。
使ったロータリースイッチが、4回路6接点300円という激安品だったので、失敗だったらセイデンか。。と怯えていましたが、どうやらこのままで十二分にいけそうです。
(耐久性はまだわかりませんが。)

なお、まだフロントパネルの加工が残ってます。。(汗

手持ちのアナログレコードは、ほとんど友人にあげちゃったので、しばらくハードオフのジャンクコーナーで100円レコード漁りになりそうです。