作るとき、組み合わせの検討時は大事。製品比較ではほぼ無用。
オーディオに限らず、工業製品のカタログには大抵「スペック」というものが書いてあり、この数値を気にされる人も多いと思います。
かくいう私も、結構なスペックヲタクだったりしますが。。。(苦笑)
しかし、困ったことに、ことオーディオ機器の場合、スペックの比較結果が聴感比較の結果に直結しないことが多かったりもします。
カタログスペックを装置選択時の競合製品との比較に用いる事が多いと思いますが、今日のオーディオ機器において、競合製品間でスペックの細かい数字を比較する意味はほぼない。と考えていただいて構いません。
現在の製造技術は、相当偏った設計でもない限り、一般的に測定可能な範囲の項目について明らかに優劣が出るような製品を作りようがなく、あってもごく小さな差しか現れないこと、またこの小さな差は、ほぼすべてと言っていいほどの場合において音の評価(差)とは関連性がありません。
製品の特徴を示したり、限界の性能を求めるような特殊な比較をする場合においては注目すべきスペックがあったりしますが、それでも聴覚に訴えるような事柄であることは希です。
重要なのは、装置組み合わせ(インターフェース)の整合性や必要条件を読むことです。
オーディオ機器にはすべからく入出力があり、その入出力には動作上の条件があり、組み合わせてシステムを構築するのに、電気的、物理的な条件を確認する必要があります。
それはスペックを読んで理解する必要があります。
極端な例では、SACDを再生しようとしているのに、DVDオーディオしか再生できないプレーヤーを選んでしまったり、ソースとなる装置が4つあるのに入力が2つしかないアンプを選んだり、同軸デジタル出力しかないプレーヤーに光入力しかないコンバーターを選んでしまうなどがあたります。
細かいところでは、入出力とも同じ電圧レベルだからと安心したら、インピーダンス整合が取れていなくてまともに動作しなかったりなんて言うのも、スペックをきちんと読まないと起こり得る話です。
あと、スペックを読む際に注意するべき点は、組み合わせる機器間で、出力側と入力側の測定基準が合っていないことがある。と言うことです。
その最たるものが、アンプの出力とスピーカーの入力です。
アンプの出力とスピーカーの入力は、名前こそどちらも「定格」だったり「最大」だったり「ミュージック」だったりしますが、実は測り方(測定条件)が違うため、組み合わせの確認にはそぐわなかったりします。
(Long-Term Maximum Input / Output Powerという、組み合わせに使える測定方法もありますが、全然定着しませんでした。。)
じゃあ、どう使うか。
スペックから、製品のアピールポイントや弱点を読む。と言うのがあります。
競合製品同士のカタログを見比べた時に、独自のスペック(項目)を載せている製品は、そのスペック自体、もしくはそのスペックを出すための技術的な優位点、競合他社製品との違いを強調したがっていると考えるのが自然です。
ただし、そのアピールポイントが自分の求めている機能、性能に関係あるのか、ないのかをきちんと見抜かなければなりませんし、またその性能が音にどう反映されるのかについては、その記述だけでわかることもほとんどありませんので要注意です。
逆に、競合製品のスペックと比較した際に欠けている項目がある場合ですが、これは2通りの考え方があります。
ひとつは普及価格帯以下の製品に多いのですが、触れて欲しくない、比較されると困る、能力的に劣るスペックである場合です。
ミニコンの出力電力など、最大だけ記載して定格値が書いてないなどというのはその典型ですね。
もうひとつは、特に載せるまでもないとか、スペック競争には荷担しないなどのその会社の姿勢の現れである場合です。
測定限界値以下のスペックに意味があるのか?という事もありますし、小さな会社でそんな値を測る測定器なんか持っていないと言う場合も含みます。
たとえば、アンプの高調波歪み率は悪の代名詞のように言われていたりしますが、トランジスタアンプの場合0.1%以下ならそれ自体が問題になるようなことはまずありません。
なお、設計、製作、製造にあたっては、測定や数字は非常に重要な意味を持ちます。
最後は聴感、主観ですが、技術的な正確性があって初めて言えることです。
最初から最後まで音がよければいいと、測定もしない作り方をした装置はちょっと信用出来ません。。
数字自体を取り立てるのではなく、スペック表示の仕方から、その会社の姿勢を読み取る。
と言うのがいいのではないでしょうか。