PPSDでフォノイコライザーを組んでみる

shapeimage_1-32

コンデンサの違いは影響するのか?

我が家のフォノイコライザーは自作のバランス入力、バランス増幅、バランス出力タイプです。
回路はオペアンプを使い、サンスイアンプの定数を参考に構成したNF型ですが、製作途中でAC増幅に変更したため、AC化用のバカでっかいコンデンサが基板の下にぶら下がっています。

これはこれで最短配線になっているし、個人用途なのでそれ自体に特段問題はないのですが、急造プロトタイプそのままでなんとも格好良くないし、フィルター回路のコンデンサを変えてみたらどんなだろう?という興味もあり、作り直してみることにしました。

なぜコンデンサを変えてみたかったかというと、フラットアンプのNFBに挿入する位相補償用数pFのコンデンサでさえ銘柄による音の変化があると言われており、NF型フィルター回路のコンデンサは3~4桁大きな容量で、この特性で周波数特性を制御することから銘柄による音の違いが大きいと考えられるためです。
ちなみに、これまで使っていたのはニッセイのAPS(ポリプロピレンフィルムコンデンサ)です。
これは現在でも比較的簡単に入手可能で評判も良く、フォノイコライザーに使いやすい定数と精度のものが手頃な価格とサイズで揃うことからの選択でした。

今回は主にこのフィルター回路のコンデンサとAC化用コンデンサと部品配置を見直します。

まずNFフィルター回路のコンデンサ。
欲を言えば銅箔スチロールコンデンサが欲しいのですが、と~~っくの昔に製造が終わっている「ほぼ絶滅種」です。
スチコン自体は特段高価な部品でもなく、昔からオーディオ工作されている方の部品箱にはゴロゴロしてる可能性はありますが、最近になって工作趣味を再開した私の部品箱には存在しません。
ニッセイAPS以外に現在入手可能でフォノイコライザーに使えそうな定数が揃っていて手頃な物というと、パッと思い浮かぶのはサンリング電子のPPSD(ポリフェニレンサルファイドコンデンサ)です。ちなみにサンリング電子は、国内で最後までオーディオ用銅箔スチコンを在庫、販売していた会社でもあります。

次に、AC化用のケミコンとフィルムコン。
これまでは、ニチコンのKZとJantzenのCrossCapの組み合わせでした。
本来ならDC印加がない部分なのでバイポーラを使うべきですが、AC電圧もほとんど掛からないので(50μV以下)、ユニポーラでもいいべとKZを使っていました。
改めてバイポーラとユニポーラを幾つか測定したところ、やはりバイポーラは軒並みESRも高域特性も悪かったのですが、ニチコンESだけはKZを対向させたバイポーラとほぼ同じ特性を示したので、今回はニチコンESを採用することにしました。
並列接続するフィルムコンデンサは性能、容量、サイズ、値段のバランスでJantzenのCrossCapのままでいきます。

さて、部品の候補は決まりましたが、問題はサンリングのPPSDはラジオデパートの海神無線くらいしか扱いがない(見当たらない)ことです。

秋葉原のパーツ店は、多くが日曜が休みだったり、平日でも私が行ける頃(時刻)には閉店してたりするものですから、オーディオ&電子工作趣味を再開して3年経っても足が遠のいていましたが、使用する部品のバリエーションを今より増やすにはそうも言ってられません。
ちょうどタイミング良く、息子が行きたいと言っていた都内のイベントが土曜日だったので、送迎ついでに普段私が行くときには閉まっている「アキバに昔からある部品屋」巡りを敢行しました。(笑)

まずはラジオセンターの三栄電波。
ここは、セイデンや東京光音電波のロータリースイッチ(の一般的な仕様)なら通常在庫していたり、某店より安価(適価)だったり、理研RMG(これもディスコン)や東京光音電波の抵抗とかニッセイAPSのG級など、オーディオ用として人気のあるパーツが多数揃ってる、本来ならオーディオ自作では外せないお店だったりします。
今回は、予備のAPS(G級)を求めてきました。
(ちなみにこちらは日曜日もやっています。)

続いてラジオデパートの海神無線。
こちらも理研RMG、東京光音電波やタクマンREY抵抗、オイルコンデンサ、フィルムコンデンサなどオーディオ自作には外せない品揃えがあります。
ここではサンリング電子のPPSDとあわせて、JantzenのCrossCap(メタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサ)、千石では品切れ定数のタクマンREY抵抗を一緒に求めてまいりました。

その他は、小柳出で電線、千石でタクマンREY抵抗、秋月でOSコン、バイポーラケミコン(ニチコンES)、オペアンプ、ソケット類を買って帰投。

これらを使って回路を組んでいきます。
PPSDの容量から計算すると、NF回路のインピーダンスはこれまでのほぼサンスイ定数の回路からは倍増します。
ノイズ的には若干不利になりますが、NFループを小さくまとめている上にバッテリー電源のため電源の誘導はほとんど気にしなくてもよいこと、もっと高いインピーダンスの製品も多いことなどから良しとしておきます。
逆にオペアンプの動作は楽になりますし、部品のサイズも小さく出来ます。
AC化用のコンデンサはメインとなる容量の大きなケミコン(バイポーラ)と特性改善のためにパラにつけるフィルムコンデンサの二つを基板の上下から付けられるように配置しましたが、そのままでは秋月C基板に乗りませんので、B基板にして電源フィルターと一緒にします。

実は、今回の回路検討に当たってAC化用のケミコンを選び直そうと各種ケミコンを測定して気付いていたのですが、バッテリー駆動前提(電源のインピーダンスが数10mΩしかない)で考えると、電源のフィルターはケミコンだとどんな高級品であろうとESR(等価直列抵抗)が高めで、あまり役に立ってないということがわかっていました。
そこで、ESRが小さく高周波特性の良いOSコンを配置し、ケミコンはおまけ程度にしたことから電源フィルター部がとてもコンパクトになり、イコライザー回路が少々大きくなっても対応が可能になりました。
これだとフィルター部と回路部をつなぐ電源コネクターも不要になりレギュレーションも改善しています。

制作途中のイコライザー基板
shapeimage_2-13

出来上がった基板をこれまでのものと交換、動作チェックして音出ししてみました。
shapeimage_3-13

これまででも充分じゃんと思っていましたが、いやはや、やってみないとわからないものです。
スッキリさわやかで抜けが良く、解像感もありながら落ち着きがあります。
楽器とボーカルの生々しさは格別です。
JR-125Sの良さが更に引き立ちます。

念押ししておくと、これまで使っていたニッセイAPSがダメと言うわけではありません。
あくまでもPPSDを使ったイコライザーの方が私の好みに合ったということです。

なお、今回は電源フィルター用とイコライザー用、AC化用コンデンサーを同時に変えたので、実際にはどれがどれほどの影響を持っているかは不明なのですが、AC化用コンデンサは特性的には劣化方向への変更、電源フィルターもバッテリー電源においては大きな影響がないとすると、イコライザー用のコンデンサの変更が効いている。というのが「個人の感想」(当社比)です。(笑)