PCL86(14GW8)でバランスドライブアンプ2

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格安真空管でバランスドライブアンプを作ってみよう(製作編)

ここから実装の検討です。
真空管アンプの製品や作例を見ると、みなさん「ラグ板」を使ってらっしゃいます。
しかし、こちとら真空管アンプなんて組み立てたことないわ、まともな参考書読んでるわけでもないわで、何ピン分使うか見当もつかない(というかぶっちゃけ面倒くさい)ので、真空管の足に直結する部分はいきなり取り付け(あとで泣きを見る)、直結しない交流負荷&DCバランス回路と定電流回路、そして電源回路はユニバーサル基板に組んでしまいましょう。

ユニバーサル基板は、電源は秋月B基板、定電流回路まわりは秋月C基板の半分で組めそうです。
フルバランスアンプということでシンメトリーな見た目で行きたいということで、シャーシはトランスを並べて置けるサイズで一番安いやつを選択してありましたので、トランス、真空管ソケット、基板、スイッチ、コネクタ類をシャーシに並べてこんな感じかな?
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真空管ソケットの向きは、どっち向きが作りやすいとか分からないし、特売真空管の印字の向きは不定なので、気分で決めました。
配線は出たとこ勝負で行きます。

ここから製作の開始。
方眼紙に穴あけ位置をマークしてシャーシに貼り、ポンチして穴あけ。
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で、穴あけした図がこちら。
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ドリルは手持ちの充電式インパクト。
他、ハンドニブラーとやすりで仕上げます。
奥に写ってるCRCは切削油代わりです。

電源、補機類の基板を作ったら組み立て開始。

トランス、ソケット、コネクタ、スイッチを取り付け、ヒーターとAC電源の配線をしたら電源基板を組み込み、電源の配線をしておきます。
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ここでいったん真空管を挿してヒーターの点火を確認しておきます。
電圧を測ったらなんとAC15.9V。
定格14.5Vの10%増しって、ギリギリですね。。
高圧側の負荷が加わってどこまで下がるか下がらないか。。
そのままいけるか、抵抗入れるか、6.3Vタップ2個に変えるか、あとで再検討しましょう。

そのあと補機基板を載せて真空管ソケットに部品を付けて配線していきます。
空中配線になるので接触しそうなところはスリーブを入れて一応配線が出来ました。
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もう一度配線を確認したところで、とんでもない間違いを発見。
真空管の規格表を再度見直したらピンアサインが違ってました。
どうやらPCL86ではなく、6BM8のピンアサインで組んじゃってたみたいです。
同じ9ピンMT複合管でも型番でアサインが違うっていうのが時代を感じますねって、ただのドジ。

配線をやり直して、まずは管なしでスイッチON。
高圧側無負荷339Vはほぼ予定通り。
低圧側のDCが6Vと-2V。
正電圧が予定より小さいのでレギュレーターの抵抗を変えてみても変わらない。
よくよく見たらレギュレーターが逆についてました。
こちらも直して10Vと-2Vになり、OKになりました。

終段用定電流回路のMOSFETは最大損失800mWですが、TO-92パッケージ(小さい)です。
常時500mWは消費する設計のためダメ元チョイスなのですが、アルミ板をくっつけて放熱の足しにしておきます。
これはうまくいったら他にも使えるかも?という実験レベルです。
ダメならTO220サイズのものに差し替えます。

部品をつけながら配線を進め、回路として動くであろうところまで来ましたが、結構なスパゲッティー状態。。(苦笑)

ここで真空管を刺して電源ON!
恐る恐る電圧を測ってたら、案の定「あ゛ー!!(感電)」「(カチャッ)あっ(パチっ)」で、1本昇天。。。

ハイ。

試作だからって手抜きし過ぎでした。
配線やり直しです。
ソケットのネジに脚を足してラグをつけて部品を固定します。
最短配線ではなくなってしまう部分もありますが、NFBのサミングポイントがより初段入力に近いところに行くなど、よかったところもあります。
あと、参考にネットで作例とか見ててふと気付いたのですが、配線に単線使ってる方が圧倒的なんですね。
なるほど配線が形どうりに収まってるわけです。。(より線では直角に曲げてその形を維持するのは難しい)
まずは「ちゃんと動作する」が重要なので、配線材はそのままで行きます。

改めて電源入れて各部を測定。
消費電力55W
ヒーター電圧15.7V

初段
B2 292V
プレート 204V
カソード 2V
カソード電流 0.44mA(換算値)

終段
B1 297V
プレート 295V
カソード 17V
グリッド 2V
カソード電流 22mA(換算値)

終段のDCバランスを調整してダミーロードとテストトーンを繋いでチェック。
仕上がりゲインは24dBくらい。
クリップ直前の出力電圧が4.2Vなので2.2W
ダンピングファクターは3くらい。

ヒーター電圧が期待したほど下がらずオーバー気味で、球がキンキン言ってます。
初段、終段とも想定よりバイアスが浅めで、特に終段が浅いために最大出力が想定の3割減です。
B電源の電圧が想定よりも高くなっていますが、バイアス電流が小さいことが影響していると考えられます。
高圧側リップルフィルターのMOSFETの発熱が思ったより大きめ。
終段定電流回路のMOSFETの発熱は現状は良いですが、バイアスを深くしたら危ないかもという感じです。

バイアスが想定より浅い原因は、定電流回路のトランジスタのVBEを0.65Vで設計していたのですが、実際には初段0.62V、終段0.58Vと低かったためで、これは真空管アンプが熱くなる(温度上昇でVBEが下がる)ことを忘れていたという「想定漏れ設計バグ」でした。
まあ、温度上昇でバイアスが浅くなることでより安全(熱暴走防止)になるという発見があったと前向きに捉えたいと思います。(笑)

ということで、各部の定数を調整します。
ヒーターの結線を6.3V×2に変更、低圧側電源はこれに5Vを足して供給します。
高圧側リップルフィルターの分圧抵抗を変更してMOSFETの発熱を下げます。
これによりB電源の電圧がさらに上がりますが、約1%(数Vレベル)なのでバイアスの調整で吸収しましょう。
バイアスは深くなるように変更。電流を予定より少し多く流してB電源の電圧が下がるようにします。(終段のプレート損失限界には注意)
仕上がりゲインはこれくらいでいいのですが、出力インピーダンスをもう少し下げておきたいので、初段の負荷抵抗を増やして裸ゲインをすこし上げ、フィードバック抵抗を減らしてNFB量を増やします。

とりあえず変更して様子を見たら、終段用定電流回路のMOSFETにくっつけたアルミ板が触れないくらいまで熱くなっていたので、TO220タイプに交換してヒートシンクを付けました。

あと、初段がC電源なしで動くか確認してみたところ、イマイチ(右は動きましたが左はバイアスが変わっちゃってNG)でした。

最終的に終段のアイドル電流をいくつか試して回路はOKとしました。
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なんかで使おうととっておいた棚板の余りを切って脇板にしてあげたらなんとなくそれっぽくなったように思うのは作者の贔屓目でしょうか?(笑)
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歪みはクリップし始めでこんな感じで、目立つ歪みは奇数次高調波です。
偶数次高調波はこの時点ではノイズに埋まっています。
終段も差動増幅なことから偶数次高調波は極めて低い、優秀な特性です。
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最終的な特性ですが
最大出力 3W+3Wくらい(歪率2%くらい)
高調波歪み率 0.5%くらい(1W 8Ω負荷時)
残留ノイズ 0.5mV以下
周波数特性20〜40kHzはほぼフラット(−1dB以内@8Ω抵抗負荷)
ダンピングファクター 5くらい
ゲイン 22dBくらい
消費電力 55Wくらい(常時)
でした。

頑張ったリップル除去が奏功したのかノイズはとても小さく、スピーカーに耳を近づけても何も聞こえません。
サウンドは私が知ってる真空管アンプの音とは(シングルともPPとも)何か違う感じです。
ダンピングファクターの低さ(出力インピーダンスの高さ)からくるスピーカーを鳴らした時の周波数特性の変化は小さく感じられ、低域が程よく締まって聞こえます。
ぼやけた感じがなく、奥行き広がりがとても気持ち良く感じられます。
球アンプの特徴(色気、雰囲気)はそのままですが、重さ軽さ明るさ暗さなどの表現、ソース(機器、録音)の違いもきっちり鳴らし分け、モニターっぽいアキュレートな感じもあります。
もちろん最大3Wに10Wアウトプットトランスの限界はあり、爆音モニターはできませんが、球アンプの緩い低音が嫌いな向きにもオススメできそうです。

先日、うちの近くで行われたスピーカーベンダーの会合で、 国内メーカー製D級アンプ、 特大300Bシングルアンプに、無謀にも我が家のバッテリードライブフルバランスアンプと、この真空管バランスアンプも参戦。
それぞれのアンプの特徴がしっかり現れてとても面白かったです。
この違いをキッチリ表現できるスピーカーがあってこそなんですけど、逆にアンプの変なところも全部出しちゃうのと、参加者のほとんどがオーディオ業界のプロの方々でしたので、内心は少々ドキドキ、脇汗べちゃべちゃでした。w

鳴らし分けでも皆さんそれぞれの特徴を汲み取っていただけたみたいですし、素子がディスコンであること以外特殊な部品は一切使っていない私のアンプにも興味を持っていただけたようで、球アンプ好きにトランジスタでもここまで出来るよというのと、安物部品球アンプでも設計次第でこれくらい出来るよという、うちのアンプの主張もちょっとは役目果たせたかな?(笑)

あ。。
この小さいスピーカーに小振りな球のバランスドライブアンプなんて面白そうじゃないですか?
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だんだん、お仕事モードに入りつつあるような。。。

なお冒頭の写真ですが、ここまで工作しておいてから、ある「失敗」に気づきました。
アウトプットトランスの向きを90度間違えてます。
この向きでは電源トランスの漏洩磁束がアウトプットトランスのコアに直列に当たり、誘導が大きくなる可能性があり、普通は磁力線が直角に当たるようにしてアウトプットトランスに誘導しないように配置します。
組み上げてから気づいたのですが、今回はこの向きでもハムの誘導は観測できませんでしたのでこのままです。(笑)